近頃、就活売り手市場、採用活動の早期化、採用ツールの充実など、採用活動の方法は多様化し、変化してきています。
そんな中、企業セミナーは学生の志望の方向性や、今後のエントリー企業を決める重要な要因になりつつあります。
2019年卒の学生を対象に調査したところ、本選考へのエントリー社数は年々減少している傾向にあります。
出典)キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果(2018年4月発行)
学生たちは、企業ページや口コミなどから多くの情報を手軽に得ることができます。そのため、セミナーではネットでは得られない情報を得たい、すでに持っている情報をまた得るような無駄な労力をかけたくないと考えています。
そして自らが持っている情報をもとに志望企業を絞り、その企業を自分の目で確かめるために、職場や社員を目にすることができる企業セミナーに参加します。
つまり企業セミナーは、学生が活字や写真以外の情報から企業を判断する場として重要度を増していると言えます。それだけに学生に悪い印象を与えてしまうと、本選考のエントリーにつながらないといった、企業にとってマイナスの働きが大きくなってしまいます。
そこで、学生がこの企業を志望したい(本選考にエントリーしたい)、働きたいと感じるようなセミナーはいったいどのようなものなのか、19卒の学生の声をもとに見極めてみましょう。
学生にとって印象が良かった企業セミナー
上記でも述べたように学生はセミナーに参加する以前にネットで基本的な情報は予習済みです。これは時期が迫れば迫るほど顕著になる傾向で、数多くの企業の中から志望する企業を選ぶ学生は時間も労力も無駄にしたくないと考えています。
よって、企業セミナーで学生が求める条件は以下の2点が挙げられます。
- ネットではわからない情報を得たい
- 選考・企業理解につながらない労力はかけたくない
以下のデータは就活中の学生が「企業セミナーで重要だと思うこと」の上位10項目です。
順位 | 項目 | 割合 |
---|---|---|
1 | 社員と直に話せる場が設けられている | 59.1% |
2 | 選考に関する情報が得られる | 46.7% |
3 | 説明・プレゼンテーションが上手 | 43.5% |
4 | 部門・職種別の説明が詳細に聞ける | 42.4% |
5 | 業界について詳しい説明がある | 32.0% |
6 | 登場する社員が魅力的である | 31.5% |
7 | 交通の便のよい場所で開催される | 28.2% |
8 | 配布資料が充実している | 26.4% |
9 | 質疑応答の時間が十分設けられている | 25.1% |
10 | 所要時間が適切である | 23.5% |
出典)キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果(2018年4月発行)
②選考に関する情報が得られる、⑦交通の便のよい場所で開催される、⑩所要時間が適切である、は“選考・企業理解につながらない労力はかけたくない”という意見に分類できると言えるでしょう。これはむしろ、悪い印象ではなかった≒良い印象につながるといった構図を表していると考えられます。それだけに企業にとってやりやすい会場・時間であったとしても、学生にとって負担が大きい方法で開催している企業が多いと言えるかもしれません。このような側面に関しては、「学生にとって印象が悪かった企業セミナー」「企業セミナーの適切な所要時間は?」の章で詳しく述べていきたいと思います。
次に、①社員と直に話せる場が設けられている、③説明・プレゼンテーションが上手、④部門・職種別説明が詳細に聞ける、⑤業界について詳しい説明がある、⑥登場する社員が魅力的である、⑧配布資料が充実している、⑨質疑応答時間が十分設けられている、は“ネットではわからない情報を得たい”という意見だと言えます。
①社員と直に話せる場が設けられている、⑥登場する社員が魅力的である、⑨質疑応答時間が十分設けられている、といった類の意見からは、実際に働いている社員の様子が学生の意思決定の大きな要因になっていることがうかがえます。インターネットで得られない一番の情報は人と空気をはさんで対峙した時の情報であり、どのような人と一緒に働くのかという感覚的な部分を学生が重要だと捉えていると考えられます。
③説明・プレゼンテーションが上手、④部門・職種別説明が詳細に聞ける、⑤業界について詳しい説明がある、⑧配布資料が充実している、といった意見は自分では調べきれなかった部分への理解を深めたいという意見だと考えられます。特に、③説明・プレゼンテーションが上手、⑧配布資料が充実している、の項目は学生にとってセミナーでしか得られない情報を得ることが重要であると考えられます。ネットの口コミなどの情報は信憑性が低い場合もありますし、確実に手元に情報が残る紙媒体の資料は近年において案外貴重であったりします。活字では伝えきれない細かなニュアンスなどは社員による説明・プレゼンテーションの方が確実であり、企業セミナーがインターネットでは伝えきれなかった情報を補填する役割を担っていると言えます。
学生にとって印象が悪かった企業セミナー
以下のデータは就活中の学生が「企業セミナーで不快に思ったこと」の上位10項目です。
順位 | 項目 | 割合 |
---|---|---|
1 | 内容に乏しい | 36.8% |
2 | 所要時間が長すぎる | 31.8% |
3 | 説明が一方的 | 31.6% |
4 | 会場へのアクセスが悪い・わかりにくい | 31.2% |
5 | 予定の時刻に終わらない | 26.5% |
6 | 登場する社員が魅力的でない | 26.4% |
7 | 質問がしにくい・時間が不十分 | 23.8% |
8 | 運営スタッフの対応がよくない | 17.7% |
8 | 選考に関する情報提供がない | 17.7% |
10 | 予約が取りにくかった | 17.5% |
出典)キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果(2018年4月発行)
まずは先の章で述べた「企業セミナーで重要だと思うこと」とちょうど反対の意見が目立ちます。
②所要時間が長すぎる、④会場へアクセスが悪い・わかりにくい、⑥登場する社員が魅力的でない、⑦質問がしにくい・時間が不十分、⑨選考に関する情報提供がない、といった、“ネットでわかる”薄い情報や、事務的な手間や時間がかかるセミナーは“選考・企業理解につながらない”ことに時間を割かれたと学生は感じてしまいます。
次に、③説明が一方的、⑤予定時刻に終わらない、⑧運営スタッフの対応がよくない、⑩予約が取りにくかった、といった学生の立場に立てていない対応を不快に感じる学生もある程度いるようです。セミナーに来た学生全員を採用することはほとんどないと思いますが、会社の認知度を上げ、肯定的なイメージを広める宣伝活動にもなるので細かな部分にも注意を払う必要があると言えます。企業セミナーにおける話し方や話す内容など、細かいノウハウについては別の記事でまとめているので是非そちらを参考にしてみてください。
エントリーシートから面接まで様々な選考を多数受ける就活生は多忙を極めます。また、いろんなタイプのセミナーを受けているので自然と他の企業と比較します。就活生への配慮が欠けた対応で、学生だからといって甘く見ていると思われると、学生が深く企業を理解する以前に社風・企業理念が合わないとして、選択肢から外されてしまう可能性があります。注意しましょう。
企業セミナーの適切な所要時間は?
時間が長すぎると評判の悪い企業セミナーですが、適切な長さとはどの程度なのでしょうか。
出典)キャリタス就活 2019 学生モニター調査結果(2018年4月発行)
学生が適切だと考えている所要時間を30分単位で調査したところ、最も多いのが「1時間30分~2時間未満」(45.3%)で、次いで「1時間~1時間30分未満」(26.1%)でした。2時間を超えるセミナーを望む学生は18.1%と2割未満にとどまり、面接やセミナーをはしごできる1~2時間程度が好ましいと学生は考えているようです。
今後どのような企業セミナーを実施するべきか?
以上をまとめると学生にとって好ましい企業セミナーは以下の条件を押さえたものだと言えます。
- ネットではわからない情報を提供する
- 選考・企業理解へのつながりが明確である
- 就活生に配慮のある対応をする
- 所要時間が1~2時間程度である
企業セミナーは学生が企業選びを本格的に行う第一歩であり、企業への理解を深めるきっかけとなるものです。そこで正確な情報と良い印象を与えることは本選考へと結びつけるうえで非常に重要です。
学生に好印象と思ってもらえる企業セミナーを実施するために、今回紹介した学生の声を参考にしてみてはいかがでしょうか。